「オンライン教育の支援と質保証-コロナ時代を越えて」

今年度のフォーラムでは、2020年初頭以来の新型コロナウイルス感染症の拡大により、その予防のための応急的な措置として世界の多くの高等教育システムにおいて急激かつ全面的な実践が迫られることとなったオンライン教育に対し、今後定常的な提供が予想されるなか、世界各国の高等教育の質保証機関において、学修者としての学生の権利を保護しその教育を提供する機関を支援するという観点から、何が求められるか、何ができるかということについて議論を行いました。

当日の進行・モデレーターを森利枝研究開発部教授が務め、プログラム前半では、オーストラリア高等教育質・基準機構(TEQSA)でEngagement Groupディレクターを務めるカレン・トレロー氏、チリのディエゴ・ポルタレス大学高等教育政策名誉教授で、国際的な高等教育専門家であるジャミル・サルミ氏より、基調講演が行われました。


 


トレロー氏は、「オーストラリアにおけるオンライン学修の質保証を考える」と題し、同国の質保証機関であるTEQSAがコロナ禍においてどのように高等教育機関と連携し、オンライン教育において質の向上をもたらす役割を果たしてきたのか事例を交えて紹介し、パンデミックにより質保証機関と高等教育機関の関係性が強化されたと述べました。また、今後質保証機関が高等教育機関における学修の質の確保を支援していく上で、質保証機関の国際的な連携や、知見を国際的に共有することの重要性を強調しました。


 


サルミ氏は、「ポストパンデミックの世界における教育の質保証の新たな課題」と題し、パンデミックの各国の教育への深刻な影響を俯瞰的に紹介し、オンライン学修の質を確保するために、教育機関に対する政府や質保証機関等の第三者機関の支援がこれまで以上に必要であり、また、コロナ禍において世界各国の学生が直面している様々な問題に対し必要とされる支援が多様であると説明しました。さらに、これらの問題を長期的に捉え、真に学修成果や学生の能力を測る新しい教育モデルへの移行の必要性とともに、質保証においても、順応性が高く、革新的で建設的な評価の手法が新時代に必要とされると訴えました。


 


プログラム後半のパネルディスカッションでは、テーマに関する国内パネリストからの問題提起とし、日本高等教育評価機構常務理事・事務局長の伊藤敏弘氏、大学基準協会事務局長の工藤潤氏、大学改革支援・学位授与機構の土屋俊研究開発部長より、コロナ禍において各質保証機関が取り組む認証評価の現状とそれぞれの視点に基づいた課題の発表が行われました。その後の全体討論では、参加者から寄せられた質問を交えながら、高等教育機関に対する評価の現状、近未来の評価、及び情報ポータルとしての質保証機関の役割の3つのポイントについて、登壇者間でディスカッションが行われ、盛況のうちに閉会しました。


 


昨年度に引き続き、国内外の5か所をつないだオンライン開催となった本フォーラムには、高等教育関係者を中心に国内外から706名の参加(視聴)がありました。


講演資料
 
基調講演
Karen TRELOAR:オーストラリア高等教育質・基準機構Engagement Groupディレクター
Reflecting on the quality assurance of online learning in Australia(オーストラリアにおけるオンライン学修の質保証を考える)
Jamil SALMI:世界高等教育専門家、ディエゴ・ポルタレス大学高等教育政策名誉教授
New Challenges for Higher Education and Quality Assurance in the Post Pandemic World(ポストパンデミックの世界における高等教育と質保証の新たな課題)

パネルディスカッション(1)問題提起
伊藤 敏弘:日本高等教育評価機構 常務理事・事務局長
「コロナ禍における大学の質保証~認証評価のあり方~」
工藤 潤:大学基準協会 事務局長
「オンライン教育から見えてきたものと認証評価の改革方向」
土屋 俊:大学改革支援・学位授与機構 研究開発部長
「高等教育におけるオンライン教育とその質保証」


 *発表資料の翻訳は仮訳を含みます。

 

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