大学改革支援・学位授与機構では、大学等の評価に携わる人材の育成と日本の高等教育における評価文化の定着のため、平成19年度から毎年、「大学評価フォーラム」を開催してきました。
平成26年度から、大学における教育研究活動の質の保証の取組みをより一層推進する目的で「大学質保証フォーラム」と改称して開催しています。

過去のフォーラムはこちらをご覧ください。

令和2年度大学質保証フォーラム「東京規約と学びの多様性―資格承認の転換期」を開催しました。


当機構は、令和2年9月23日(水)に、令和2年度大学質保証フォーラム「東京規約と学びの多様性―資格承認の転換期」を開催しました。本フォーラムの開催にあたっては、公益財団法人大学基準協会、公益財団法人日本高等教育評価機構、一般財団法人大学・短期大学基準協会、一般財団法人大学教育質保証・評価センター、認証評価機関連絡協議会、アジア太平洋質保証ネットワーク(APQN:Asia-Pacific Quality Network)からご後援いただきました。コロナ禍を受けて、国内外の5か所をつないだオンライン開催となりましたが、高等教育関係者を中心に日本を含む39の国・地域からの参加登録があり、当日は471名(※)の参加がありました。
※ YouTubeアナリティクスにおける最大同時接続数に基づき、同時接続数ひとつ当たりを1名として推計しています。


(配信会場の様子)


本年度のフォーラムでは、ユネスコの高等教育の資格の承認に関するアジア太平洋地域規約(通称:東京規約)及び高等教育に関する資格の承認のための世界規約の理念を共有した上で、海外の教育制度の違いを乗り越える資格承認の事例や課題、国内情報センター(NIC:National Information Center)の果たす役割等について理解を深め、資格承認を取り巻く加速度的な国際的展開や、予測困難な環境変化に対して柔軟に適応することの重要性が明らかとなったポストコロナにおいて、日本はどのように対応すべきかについて議論が行われました。

本フォーラムは、堀田研究開発部教授・高等教育資格承認情報センター長の司会により進行され、プログラム前半では、福田機構長の開会挨拶に続いて、海外有識者3名(ユネスコ・バンコク事務所教育イノベーション・スキル開発部門チーフLibing Wang氏、東南アジア教育大臣機構高等教育開発地域センター所長Chantavit Sujatanond氏、及びイタリアの学術移動・同等性情報センター(CIMEA)代表やリスボン承認規約事務局代表を務めるLuca Lantero氏)による基調講演が行われました。


(基調講演・パネルディスカッションの様子)


【基調講演について】
Wang氏は、コロナ禍により、多くの高等教育機関において対面型からオンラインや融合型の授業形態への転換が生じていると説明しました。さらには、学校外の教育との融合が起きるなど、学びの形態の柔軟化・多様化が加速する中にあっては、学習成果に基づく単位・資格の承認が重要であると説きました。また、学習の比較可能性を確保するため、学習が柔軟で多様な形態であっても、共通の枠組みに基づいて学習を評価することの重要性を強調しました。
Sujatanond氏は、ASEAN資格参照枠組み、大メコン圏大学コンソーシアムといった学生の国境を越えた移動を促進する、東南アジアにおける様々な枠組みや取組について紹介しました。また、コロナ禍によってもたらされたニューノーマルに適応した、学習の提供や資格承認の枠組みを設計・構築する必要があると説くとともに、高等教育制度や資格について、明確な情報を提供することの重要性を訴えました。
Lantero氏は、高等教育の資格の承認に関する問題は世界規模の課題であり、様々な枠組みが存在することに触れると同時に、コロナ禍においても、国際的な移動を伴う学習を希望する学生は多く、資格承認は依然として重要であると説きました。加えて、資格の真正性の確認や実質的差異といった、資格承認において重要な概念について説明しました。

プログラム後半のパネルディスカッションでは、堀田センター長の進行のもと、国内パネリストから「日本のグッド・プラクティスと今後の期待」を込めた問題提起として、文部科学省高等教育局主任大学改革官佐藤邦明氏、株式会社日立製作所人財統括本部人事勤労本部長山本夏樹氏、上智大学グローバル化推進担当副学長・総合人間科学部教育学科教授杉村美紀氏、独立行政法人国立高等専門学校機構理事長谷口功氏より、政府・企業・大学・高等専門学校の立場から、それぞれの視点に基づく日本の現状と課題について発表が行われました。

【国内パネリスト発表について】
佐藤氏は、ポストコロナにおける国際教育の提供について、対面型を基本としつつも、デジタル技術を用いた手法が根付き、今後も増加する可能性に言及しました。また、世界の動向として、学習歴証明書のデジタル化とそれがもたらし得る効果について紹介しました。
山本氏は、企業による新卒者の採用をめぐり、自社を事例にして、現在はこれまでのメンバーシップ型の雇用から、職務を明確化・限定したジョブ型の雇用へ移行する過渡期にあると述べました。また、大学が保証してきた教育の質とそれに基づいて育成された“人財”に対して企業が求める質とのギャップが生じており、「ジョブ型インターンシップ」をはじめとした産学連携の取組促進の必要性について言及しました。
杉村氏は、大学は、学生の学びや学生に身に付けさせるコンピテンシーについて、社会の人材育成に対する要請、持続可能な発展のための教育、グローバル・シティズンシップ教育を考慮して学習成果並びに学習成果の評価を検討する必要があると述べました。
谷口氏は、高等専門学校が日本独自の高等教育機関であることを強調した上で、そこでの教育は、様々な科学や技術によって社会の諸課題を解決し社会を変革できる「社会のお医者さん」となる人材養成を行っていること、また、学習成果がより重視されつつある世界的な潮流と合致していることを説明しました。
 
その後の全体討論では、各登壇者からのコメントを交えながら、フォーラム中に参加者に対して行ったライブアンケートの集計結果が紹介されました。

【全体討論について】
ライブアンケートでは、「今後大学が評価を促進すべき非伝統的な学び」について、幅広い学びの形態が考慮の対象となることが明らかになりました。また、「大学で非伝統的な学びの成果を評価する際の課題」として、成果水準の設定や学びの経験の真正性の判断といった質保証の観点からの対応の必要性が指摘されました。
これらを受けて各登壇者からは、多様な学びとその評価の進展を導くため、学生の経験や技能に対する単位の付与、大学における教育プログラムの新たなモデル構築や教授法の改善をすすめるべきとの意見がWang氏やSujatanond氏からありました。これを踏まえて山本氏より、職業能力に結びつく学習成果を誘起する方策として、参加企業での質保証を伴うインターンシップを取り入れた教育プログラムの産学連携による開発・導入が提案されました。谷口氏は、教育の成果は、育成された人材を介して社会に実装され、社会に役立つものでなければならないとし、これに焦点を当てた評価が教育機関でなされるべきと説きました。また、Lantero氏より、社会人の再教育やイノベーションを先導することが高等教育機関の役割としてあり、それらを促進するためには知識のモビリティや柔軟な教育展開への対応が必要となることが指摘されました。杉村氏は、国際的な問題に対する人材育成の担い手が大学であることも踏まえ、東京規約によって、人材のコンピテンシーやその評価について国境を越えて議論するプラットフォームができ、企業、学生、市民を含めた幅広い高等教育のステークホルダーによる議論が展開することに期待を示しました。
そして、今後の高等教育のあり方については、佐藤氏はコロナ禍を受けた大学におけるオンライン学習が広く展開されることを契機として、大学で学ぶことの意義や学位の価値が社会から問われていると述べました。そして、大学の透明性は学位の価値を社会説明することのみならず、大学での学びと非伝統的な学びとの相互認証においても重要であると指摘しました。
これらの議論を受けて、モデレーターを務めた堀田教授は、今後の高等教育のあり方として、従来からの学生に対する知識の教授のみに重点を置くのではなく、学生の成功や社会での活躍が達成できるよう学生をコーチングするものとなり、そのために、社会が求めている高度な技術や知識の習得に向けて必要な経験を積むことのできる非伝統的な学びを大学教育の中に取り込む必要があり、学生を中心にした教育提供を突き詰めるべきとして、フォーラムでの議論を総括しました。
最後に、長谷川理事より、高等教育の国際化ならびに流動性の促進と外国資格の承認、そして、オンライン等の非伝統的な学習を議論した本フォーラムに、インターネットを通じて多くの方に参加いただいたことに対する謝辞を含めた挨拶をもって、盛況のうちに閉会しました。


【講演資料等】
発表タイトルをクリックすると、講演資料がダウンロードできます。
※発表資料の翻訳は仮訳を含みます。
基調講演
Libing WANG:ユネスコ・バンコク事務所 教育イノベーション・スキル開発部門チーフ
「質の保証と承認による高等教育における柔軟で多様な学びへの支援」

Chantavit SUJATANOND:東南アジア教育大臣機構 高等教育開発地域センター所長
「東南アジアの資格承認における課題と挑戦」

Luca LANTERO:イタリア 学術移動・同等性情報センター(CIMEA)代表、リスボン承認規約事務局代表
「承認の世界」

パネルディスカッション
佐藤 邦明 :文部科学省高等教育局主任大学改革官
「コロナ禍と国際化・教育交流の転換点」

山本 夏樹:株式会社日立製作所人財統括本部人事勤労本部長
「大学質保証フォーラム パネルディスカッション課題の共有」

杉村 美紀:上智大学グローバル化推進担当副学長・総合人間科学部教育学科教授
「高等教育機関からみた質保証の国際連携に関する意義と課題」

谷口 功  :独立行政法人国立高等専門学校機構理事長
「高専とは?」

ライブアンケートの結果
こちらをクリックするとダウンロードできます。

過去に開催した大学質保証フォーラム(平成19年度~)

開催年度/テーマ/キーワード 報告書

令和元年度
変革期における大学質保証

開催概要はこちら

キーワード:
高等教育質保証のあり方、質保証機関の国境を越えた協力、APQR、社会からの信頼や要請に応える質保証、アクレディテーション

平成30年度
国境を越える大学

キーワード:
海外キャンパス、国際競争力、ガバナンス、教育の質

平成29年度
教員と職員‐学生のための大学をつくる‐

キーワード:
大学マネジメント、教職協働、スタッフ・ディベロップメント(SD)、学生の参画

平成28年度
質保証、だれが何をどうするか

キーワード:
内部質保証、外部質保証、米国、ESG

平成27年度
知の質とは―アカデミック・インテグリティの視点から

キーワード:
アカデミック・インテグリティ、研究倫理、知の質保証

平成26年度
大学の多元的道しるべ~ランキング指標を問う~

キーワード:
Umaultirank、Umap、教育研究情報の定量化・活用、データ活用のためのインフラ・指標開発

平成25年度
学生からのまなざし―高等教育質保証と学生の役割

キーワード:
高等教育質保証における学生参画、欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン(ESG)、学生ユニオン、学生評価者・学生評価委員、学生参画型FD(ファカルティ・ディベロップメント)、授業アンケート、生活実態調査、学生による評価、学内マネジメントにおける学生の役割、欧州高等教育質保証協会(ENQA)、英国高等教育質保証機構(QAA)、欧州、英国、フィンランド

平成24年度
「学び」からみる高等教育の未来

キーワード:
学習成果(learning outcomes)、学習成果アセスメント、米国における大学の教育活動の現状、新しい形態の大学(オンライン大学・営利大学など)、大学が新しい市場を生き抜く方法、成績のインフレーション、アセスメント・ループ、アセスメント・ツール、GPA、JCIRP、フリップト・クラスルーム(flipped classroom)、米国

平成23年度
グローバル時代における新しい質保証―国際機関の取り組みからみえる「機能」とは―

キーワード:
機関別認証評価の検証結果、大学教育のグローバル化、質保証の成果・リスク、質保証の国際化、質保証の発展のための戦略、機能別分化、国際連合大学(国連大学)、OECD

平成22年度
学習成果を軸とした質保証システムの確立―学習成果の効果的なアセスメント・可視化・発信とは―

キーワード:
第三者評価、学習成果を軸とした質保証システム、学習成果を軸としたPDCAサイクル、米国

平成21年度
内部質保証システムの拡充を目指したアカデミック・リソースの活用―個性ある大学づくりのために―

キーワード:
個性ある大学づくり、評価文化の定着、アカデミック・リソースの把握・分析、内部質保証システム、アカデミック・ポートフォリオ、米国

平成20年度
大学評価の戦略的活用と方法

キーワード:
自己点検・自己評価、外部評価(認証評価など)、認証評価の戦略的活用、英国高等教育質保証機構(QAA)

平成19年度
評価への取組 改善への取組

キーワード:
評価結果、大学改革、評価活動の充実、大学が主体となる評価


〒187-8587 東京都小平市学園西町1-29-1

電話 : 042-307-1500(代)

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