フランス、台湾、ドイツの覚書締結機関が当機構を訪問しました
令和7年5月12日(月)、当機構と連携協力のための覚書を締結しているフランス、台湾、ドイツの質保証機関が当機構の竹橋オフィスを訪問し、互いの質保証システムや各質保証機関が行う大学等の評価活動等について学び合う、スタディビジットプログラムを開催しました。これは、同じ週に東京で開催されたINQAAHE ※の隔年総会への参加のための来日にあわせて当機構を訪問し、当機構が行う評価業務等について学びたい旨各機関から希望があり、合同のプログラムとして企画・実施したものです。
※:高等教育質保証機関の国際ネットワーク(International Network for Quality Assurance Agencies in Higher Education)
当日は、計8名の来訪がありました。フランス研究・高等教育評価高等審議会(Hcéres:High Council for the Evaluation of Research and Higher Education)から1名、台湾高等教育評鑑中心基金会(HEEACT:Higher Education Evaluation and Accreditation Council of Taiwan)からProf. Dr. Der-Tsai Lee(李徳財)(President/董事長)をはじめ5名、ドイツアクレディテーション協議会(GAC:German Accreditation Council)から1名が参加しました。また、トルコ高等教育質カウンシル(THEQC:Turkish Higher Education Quality Council)の所属で、INQAAHEや米国高等教育アクレディテーション協議会(CHEA:Council for Higher Education Accreditation)等質保証の国際的なネットワークにおいて要職を務める1名が陪席しました。当機構からは、服部機構長をはじめ、光石理事、研究開発部教員、国際課職員が出席しました。
<来訪機関について>
※トルコの機関については省略
Hcéresは、高等教育・研究法に基づき2014年に設立された独立行政機関です。Hcéresが行う大学評価として、
「学術共同体評価」、「機関別評価」、「教育課程・博士学院(学士・修士・博士)評価」、「研究評価」の4種類があり、
フランス全土を5つの区域に分け、1年ずつ順に一つの区域を対象に4種類の評価をまとめて行っています。
2011年3月に当機構と覚書を締結しました。
HEEACTは、台湾教育部及び台湾の大学の協賛を得て2005年に設立された、政府から独立した公的機関で、
学術系の高等教育機関(大学・独立学院)に対する6年周期の機関別評価(受審義務)及びプログラム評価(受審任意)等
を実施しています。当機構とは、2011年6月に覚書を締結しました。
GACは、2005年に設立された公益目的の財団法人で、ドイツの16州から資金提供を受けて運営されています。
ドイツの高等教育機関に対する評価は、欧州質保証機関登録簿(The European Quality Assurance Register
for Higher Education: EQAR)に登録された質保証機関の中からGACが認定した機関によって行われ、
GACは、各質保証機関がまとめた評価報告書に基づき評価結果を決定するという役割を持ちます。
2015年10月に当機構との覚書を締結しました。
午前は合同セッションとして、野田研究開発部教授による全体進行のもと、服部機構長による歓迎挨拶及び各機関からの出席者紹介に続いて、日本、フランス、台湾、ドイツの高等教育質保証システムの概略や各質保証機関が行う大学等の評価活動の近況等の情報交換を行いました。当機構からは、嶌田研究開発部教授が、日本の高等教育の現状の概観、認証評価の課題、新たな政策方針を受けた質保証枠組み再設計に向けた論点について、発表しました。
各機関からの発表後には質疑応答とディスカッションが行われ、高等教育や大学等の評価のシステムは国・地域ごとに異なるものの、評価負担の軽減、高等教育機関の自律(autonomy)、大学等の個性や特徴に即した評価、大学等の質の向上に資する評価の在り方等が共通して課題となっており、各国・地域及び各質保証機関において、議論や取組みが始まっていることがうかがえました。また、参加者からは「AI(人工知能)やランキング、マイクロクレデンシャル等、新たなトレンドや課題がある中、高等教育質保証に携わるコミュニティが目指すものはみな同じであるはずであり、いつどこで優良事例が出るかわからないため、国・地域、質保証機関の規模に関わらずこのような情報交換をし続けることが重要」とのコメントが寄せられ、異なるシステムを持つ質保証機関が学び合うことの意義が強調されました。
午後は個別のセッションとして、Hcéresとは、翌日からのINQAAHE隔年総会での当機構の戸田山研究開発部長とHcéresとの共同発表に向けた事前打合せ、HEEACT及びGACとは、互いの研究活動の近況等に関する情報交換を行いました。機構からは研究開発部の野田教授及び李教授が、日本の教育資格枠組み、マイクロクレデンシャル、学位授与、質保証における学生参画等、各自の最近の研究について紹介しました。HEEACTからは、内部質保証における学生参画に関する調査研究についての情報提供があり、台湾では、学生による質保証活動への参画については、大学側・学生側双方の意識はさほど高くはない、といった報告がありました。
また、当機構と来訪機関との今後の連携について、セッション外の時間も含めて意見交換を行い、互いの質保証システム等に関する情報交換や人的交流、研究活動における協力の継続と一層の活発化に向けて今後議論していくことを確認しました。
今回のスタディビジットプログラムは、当機構の評価事業や研究活動等を発信するとともに、互いの質保証に関する動向を知り、人的な交流を深める貴重な機会となりました。