当機構は、令和元年7月25日(木)に一橋講堂にて、令和元年度大学質保証フォーラム「変革期における大学質保証」を公益財団法人大学基準協会、公益財団法人日本高等教育評価機構、一般財団法人短期大学基準協会、認証評価機関連絡協議会、並びにアジア太平洋質保証ネットワーク(APQN:Asia-Pacific Quality Network)及び米国高等教育アクレディテーション協議会国際質グループ(CIQG: CHEA International Quality Group)の後援のもと開催しました。当日は、高等教育関係者を中心に約250名の参加がありました。本年度のフォーラムでは、大きく変貌しつつある米国及びアジア太平洋地域における高等教育や質保証の状況、また、国内の質保証関係者が捉えている日本の現状と課題について理解を深め、日本の高等教育質保証は今後どうあるべきかについて議論しました。

 プログラム前半では、福田機構長の開会挨拶、山本研究開発部長の趣旨説明に続き、インド国家評価アクレディテーション審議会(NAAC:National Assessment and Accreditation Council)顧問、高等教育質保証機関国際ネットワーク(INQAAHE:International Network for Quality Assurance Agencies)元会長及びアジア・太平洋質保証ネットワーク(APQN:Asia Pacific Quality Network)前会長であるJagannath Patil氏と米国高等教育アクレディテーション協議会会長のJudith Eaton氏より、基調講演が行われました。


会場の様子


 Patil氏は、世界において、海外留学者の増加や高等教育機関の国際化による国際的流動の高まり、また、先進技術を活用したMOOCs(Massive Open Online Courses)や学習を詳細な単位で認証するマイクロクレデンシャルなど新たな高等教育の形態の出現、世界ランキングの存在感の増大など高等教育が複雑化しつつある中、質保証機関や質保証ネットワークの役割が重要であると示唆しました。2016年にNAACの主導的役割により採択されたベンガルール声明が目指す質保証機関間における国境を越えた協力については、情報共有が信頼を、信頼が協調を生み、ひいては情報共有を生むという好循環があると説きました。また、質保証機関であることを偽る所謂アクレディテーション・ミルも脅威であることを指摘し、質保証機関が外部評価を経て登録されるAPQNが創設した質保証機関登録簿制度(APQR:Asia Pacific Quality Register)を紹介しました。このほか、日印の両国関係構築を背景に、質保証機関間の協力に対する期待についても言及がありました。


講演するPatil氏


 続いて登壇したEaton氏は、社会からの信頼や要請に応える質保証・評価のあり方を考える上で、多様なバックグランドを持つ学生の増加、高等教育の成果に対する検証の要請、学問と言論の自由に対する脅威、高等教育機関の多様性の増大、デジタル化した教育の質保証、多国間学生交流や大学ランキングなどの様々な枠組の出現などの国際的な変化について認識する必要があると説きました。また、国内における変化や動向として、高等教育の成果を求める社会からの声、人種やジェンダー問題にも関係する言論及び学問の自由に対する議論の勃興、大学無償化の要請について言及しました。また、100年以上の歴史を持つ米国のアクレディテーション制度は、地域ごとに発展してきており、政府関与を排して高等教育機関が主導しているといった特徴があると説明しつつ、近年の高等教育と質保証の改革や変革に対する圧力や政府による関与が強まっていることにも触れ、米国内外で起こる変化への対応を模索しつつも、全ては学生のためにという考え方が根底にあることを説明しました。


講演するEaton氏


 プログラム後半のパネルディスカッションでは、土屋研究開発部特任教授の進行のもと、まず、国内パネリストから日本の状況説明と問題提起として、文化庁文化資源活用課文化遺産国際協力室長(前・文部科学省高等教育局企画官及び高等教育政策室長)の石橋晶氏、一般財団法人大学教育質保証・評価センター代表理事(元公立大学法人大阪府立大学理事長)の奥野武俊氏、早稲田大学教育・総合科学学術院教授(教育社会学)の濱中淳子氏が、政府・質保証機関・研究者の立場からそれぞれの視点に基づく日本の現状と課題について発表を行いました。
その後は、先述の海外からの基調講演者2名を加えて、全体討論として日本の高等教育質保証のあり方及びそれを取り巻く社会的課題などについて、会場参加者からの質問を踏まえて活発な議論を行いました。
 最後に長谷川理事の挨拶をもって、盛況のうちに閉会しました。


パネルディスカッションの様子


 また、翌26日(金)には、本フォーラムに登壇した外国人専門家2名を招いた公開研究会を開催し、主に米国及びインドの高等教育質保証の制度に対する理解を深めました。
Eaton氏は、米国と日本の評価制度との共通点や人種や貧富の差による教育格差などの米国が抱える大きな課題、さらに、高等教育に対する政府の関与が強まる一方で、政治的な要因から関係する立法手続きが数年にわたり停滞していることが高等教育界に困難をもたらしていることに言及しました。Patil氏は、2017年に改定されたアクレディテーションの枠組について、評価プロセスの完全ICT化、質的データと量的データの双方に基づく評価、教育機関を評価する専門家のマッチングのオートメーション化などの特徴があると説明しました。評価実施には幅広い視野で臨む姿勢が重要であるとしながらも、これらのデータは国家レベルのベンチマーキングや大学ランキングにおける活用でインドの高等教育機関の評価を上げるためにも役立つと解説しました。
質評価に携わる者の関係性について地域別差異の有無などの質問が来場者からあり、研究会は盛況のうちに終了しました。
なお、大学質保証フォーラムの発表資料は当機構のウェブサイトに掲載しています。ぜひご覧ください。


公開研究会の様子


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