平成30年度実施の認証評価等の評価結果について

 独立行政法人大学改革支援・学位授与機構では、学校教育法第109条及び第123条の規定に基づき、大学、高等専門学校及び法科大学院の認証評価を行っています。
 このたび、平成30年度実施の認証評価等の評価結果を取りまとめ、文部科学大臣に報告するとともに、各対象機関及び設置者に通知しましたので公表します。
 また、認証評価とは別に、平成30年度に大学等の希望に応じて当機構が独自に行った選択評価の結果についても、あわせて公表いたします。

1.平成30年度に実施した認証評価等の結果について

  1. 大学機関別認証評価(評価対象機関【5大学】)

    評価基準を満たしている
    筑波技術大学公立はこだて未来大学秋田公立美術大学山梨県立大学愛知県立大学

    評価基準を満たしていない
    該当なし

  2. 高等専門学校機関別認証評価(評価対象機関【6高等専門学校】)

    評価基準を満たしている
    八戸工業高等専門学校長野工業高等専門学校沼津工業高等専門学校鈴鹿工業高等専門学校明石工業高等専門学校阿南工業高等専門学校

    評価基準を満たしていない
    該当なし

  3. 法科大学院認証評価(評価対象【13法科大学院】)

    評価基準適合
    東北大学大学院法学研究科総合法制専攻東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻名古屋大学大学院法学研究科実務法曹養成専攻京都大学大学院法学研究科法曹養成専攻大阪大学大学院高等司法研究科法務専攻神戸大学大学院法学研究科実務法律専攻広島大学大学院法務研究科法務専攻九州大学大学院法務学府実務法学専攻首都大学東京大学院法学政治学研究科法曹養成専攻大阪市立大学大学院法学研究科法曹養成専攻学習院大学大学院法務研究科法務専攻

    評価基準不適合
    横浜国立大学大学院国際社会科学府法曹実務専攻近畿大学大学院法務研究科法務専攻

2.大学機関別認証評価の概要

(1)評価結果

〔評価対象機関〕5大学(国立1大学、公立4大学)
〔評価結果〕いずれの大学も、当機構が定める大学評価基準を満たしている。

(2)認証評価委員会の所見

 平成30年4月に細目省令※が施行されたことから、いわゆる「3つのポリシー」について、相互関係を含め詳細に点検し分析したところ、相応の対応がなされており、優れた取組が指摘できた一方、一貫性や明確性を欠き社会から理解しにくくなっている場合も見受けられた。
 学生の多様性に応じた丁寧な学習支援が各大学に共通して実施されており、高等教育段階における学生支援に重きを置いた取組が進展していることが確認できた。
 平成31年度から機構が実施する大学機関別認証評価は3巡目に入り、内部質保証を重点的な認証評価の対象とする新たな基準に照らして、より実質的な改善を促す認証評価を実施していきたい。
 ※学校教育法第110条第2項に規定する基準を適用するに際して必要な細目を定める省令

(3)評価結果のポイント

 大学機関別認証評価の2巡目(平成24~30年度)では、「大学における教育の質保証システム」「学習成果」を重視しており、これらに係る今年度の主な指摘事項は、以下のとおりである。また、入学者受入方針、教育課程の編成・実施方針及び学位授与方針の3つのポリシーの策定・公表状況等についての評価も実施している。

【大学における教育の質保証システム】

  • 教育の改善・改革への取組に責任を有する組織として大学質保証委員会を設置し、教育研究活動の効果の把握・分析を行う自己点検・評価部会とともに3つのポリシーの見直し等を実施している。(山梨県立大学)

【学習成果】

  • 企業からの支援を受け地域社会の直面する課題を解決する情報システムを提案・実装することを目的とする「高度ICT演習」には正規課程外のプロジェクトであるにもかかわらず数多くの学生が参加し、同プロジェクトの修了生の多くが研究開発人材として情報系企業に就職している。(公立はこだて未来大学)
  • 学生の就職において、広告、印刷、出版、ウェブ製作等のクリエイティブ関連企業への就職の割合が高く、 美術系大学に期待される人材育成の役割が果たせている。(秋田公立美術大学)

【3つのポリシーの策定・公表状況等】

  • 学位授与方針の中で、全学共通の「学士基盤力」と学部・学科等の「学士専門力」を具体的に設定し、それらに基づいて教育課程の編成・実施方針を整合的に定め、学習成果と授業科目の関係をカリキュラムマップで明示することにより、学習を進めるにあたり、学生から見てわかりやすい形で整備されている。(山梨県立大学)

【学習支援】

  • 技術職員が学生の障害特性に配慮しながら、授業内容に応じて、パソコン文字通訳、手話通訳及び触手話など、学生に対し必要な情報の提供を保障する支援を組織的に実施するとともに、記録データや実施報告データを作成し、そのノウハウを蓄積・共有することにより、支援実施後の振り返りができる仕組みを構築している。(筑波技術大学)
  • 「ローカルメディアと協働するアートマネジメント人材育成事業」を企画及び実施し、県内の複数地域と連携し、学生・教員が地域住民とともに数多くのプロジェクトに取り組み、イベントやシンポジウムを開催することを支援している。(秋田公立美術大学)
  • 「課題解決プロセスと未来志向の対話による実践型カリキュラム構築」において、多くの地域志向教育研究プロジェクトを実施するとともに、取組終了後も学生の学習活動を組み込む科目を開設し、地域での活動を段階的な学びにつなげている。(山梨県立大学)
  • 多言語学習センター(iCoToBa)では、教員と留学生が協力して、グローバル人材育成のための情報共有、グループ活動、スキルアップ等の学習支援を活発に行っている。(愛知県立大学)

3.高等専門学校機関別認証評価の概要

(1)評価結果

〔評価対象機関〕6高等専門学校(国立6校)
〔評価結果〕いずれの高等専門学校も、当機構が定める高等専門学校評価基準を満たしている。また、重点評価項目である評価の視点1-1の内容を全て満たしている。

(2)認証評価委員会の所見

 3巡目となる本年度より、対象校の負担軽減を図るとともにより効果的な評価とするため、評価基準や自己評価書様式等の大幅な見直しを行っており、特に教育の内部質保証システムに関しては重点評価項目を設け段階別評価を行った。重点評価項目に関しては全ての高等専門学校が「重点評価項目の内容を全て満たしている。」状況にあった。
 また、高等専門学校の教育活動に関しては、これまでの創造性・実践力を育む教育に関する特色ある取組に加え、国際性の涵養に関連した活発な活動が行われ、優れた成果を上げていた。さらに、就職・進学状況に関しては、従来と同様、極めて良好な成果を上げていた。

(3)評価結果のポイント

 3巡目の認証評価では、これまで重視してきた「教育の内部質保証システム」をより的確に評価できるよう、重点評価項目を設定し、段階別評価を行っている。その結果、全ての高等専門学校において「重点評価項目の内容を全て満たしている。」状況にあった。また、従来から重視してきた「創造力・実践力を育む教育方法の工夫」に加え、「国際性を養成するための教育方法の工夫」を重視している。これらに係る今年度の主な指摘事項は、以下のとおりである。

【重点評価項目の評価】

  • 学校の総合的な状況について、根拠資料の収集や関係者からの意見聴取の結果をもとに、継続的に自己点検・評価を行いながら、その結果や外部評価等の結果をもとに、必要な改善を逐次行っており、内部質保証システムをいくつかの段階ごとに整備し、それを積み重ねることにより全体の内部質保証システムを構築しており、実際に機能している。(明石工業高専)

【創造力・実践力を育む教育方法の工夫】

  • 創造性を育む工夫として、PBL型の授業である「創造工学」(必修2単位)を全学科の4年次の前期科目として開設し、学生がこれまでに得た知識と技術を活かし、学生自ら創作物をゼロから発案、設計・作製して、高専祭での展示を目指し、優れた作品には当校の協力企業で構成される鈴鹿高専テクノプラザによる表彰を行っている。こうした授業の成果として、アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト、全国高等専門学校プログラミングコンテスト、ソーラーカーレース鈴鹿等において優れた成果を上げている。(鈴鹿工業高専)
  • 学生の実践力を育むための学校全体の工夫として、4年次「校外実習(インターンシップ)」のほか、必修ではないものの、3、4年次の長期休業中に合計7週間にわたり同一企業で就業研修を行うコーオプ教育を行っており、就業スキル、技術遂行スキル、課題解決スキル等の獲得において一定の成果を上げている。(阿南工業高専)

【国際性を養成するための教育方法の工夫】

  • 積極的に国際交流の協定を締結し、海外研修プログラム等、教員や学生の国際交流の実績を上げている。また、英語教育の充実に力を入れており、平成29年度の実用英語技能検定(以下「英検」という。)合格者数(準2級59人、2級25人、準1級5人)は全国高等専門学校の中で2年連続最多となっている。このように国際性の育成に熱心に取り組み、成果を上げている。(八戸工業高専)
  • 外国語の基礎能力について、TOEICを4年次生全員に受けさせ英語の実践的能力の向上を促しているだけでなく、中国語やハングル語科目を設置し英語以外の外国語の基礎能力についても育成するとともに、海外インターンシップでは、交流協定を締結している台湾国立台北科技大学又は香港IVEでの実習を通じて専門の基礎知識又は技能を習得させている。台湾、タイ、シンガポール、カンボジアの協定校や企業(日本企業の海外支部含む)を中心に学生を派遣しており、平成29年度は協定校である台北科技大学に長期インターンシップとして学科生5人が参加したほか、学科生、専攻科生の合計59人を海外に派遣するなど、国際性を育む教育に関して実績を上げている。(長野工業高専)

【その他の主な優れた点】

  • 学習サポートセンターがFuji Cafe及び礎塾という学習相談スペースを運営しており、学生が放課後に自由に学習し、必要に応じて担当教員や高学年学生からアドバイスや指導を受けられる学習環境を提供している。この取組は、これまで学生や教員の要望等に対応した改善を行ってきた結果、低学年の学生を中心に利用者数は年々増加しており、放課後の学習スペースとして定着してきている。(沼津工業高専)

4.平成30年度法科大学院認証評価結果の概要

(1)評価結果

〔評価対象機関〕13法科大学院(国立9大学 公立2大学 私立2大学)

〔評価結果〕

評価基準適合:
東北大学大学院法学研究科総合法制専攻
東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻
名古屋大学大学院法学研究科実務法曹養成専攻
京都大学大学院法学研究科法曹養成専攻
大阪大学大学院高等司法研究科法務専攻
神戸大学大学院法学研究科実務法律専攻
広島大学大学院法務研究科法務専攻
九州大学大学院法務学府実務法学専攻
首都大学東京大学院法学政治学研究科法曹養成専攻
大阪市立大学大学院法学研究科法曹養成専攻
学習院大学大学院法務研究科法務専攻

評価基準不適合:
横浜国立大学大学院国際社会科学府法曹実務専攻
近畿大学大学院法務研究科法務専攻

(2)評価結果のポイント

評価基準不適合とした大学についてのその理由は以下のとおり。

【横浜国立大学】

〔評価結果〕
 満たしていない基準があり、他の基準の判断結果も含め総合的に考慮しても、教育の質に重大な欠陥があると認められるため、法科大学院評価基準に適合していない。

 (理 由)
  • 当該法科大学院においては、自己点検及び評価の結果に基づいて改善や検討が行われているものの、司法試験の合格率が直近の平成30年度において全国平均の2分の1を大きく下回っているほか、平成31年度から学生募集を停止し、当該法科大学院の教育を通じて、教育理念及び教育目的を達成することが困難であると自ら判断している。このため、当該法科大学院の教育を通じて、教育理念及び教育目的が達成されていないと判断する。
  • 入学定員充足率が平成26年度、平成28年度、平成29年度及び平成30年度において50%を下回っているほか、平成30年度における入学者数が10人を下回っており、所定の入学定員と著しく乖離している。ただし、学生募集を停止しており、当該状況を是正することは困難である。
  • 平成26年度から平成30年度において入学者選抜における競争倍率が2倍を下回っており、当該状況を是正するための抜本的な改善措置が講じられていない。ただし、学生募集を停止しており、当該状況を是正することは困難である。
  • 当該法科大学院は、司法試験の合格率が直近の平成30年度において全国平均の2分の1を大きく下回っているほか、当該法科大学院の教育を通じて教育理念及び教育目的を達成することが困難であると自ら判断し、平成31年度から学生募集を停止しており、当該法科大学院が抱える課題を解消するための実効性ある改善方策が実施されているとはいえず、自己点検及び評価の結果が当該法科大学院における教育活動等の改善に活用されるには至っていない。

【近畿大学】

〔評価結果〕
 満たしていない基準があり、他の基準の判断結果も含め総合的に考慮しても、教育の質に重大な欠陥があると認められるため、法科大学院評価基準に適合していない。

 (理 由)
  • 当該法科大学院においては、司法試験の合格率が平成26年度から平成30年度において全国平均の2分の1を大きく下回っているほか、平成31年度から学生募集を停止し、当該法科大学院の教育を通じて、教育の理念及び目標を達成することが困難な状況となっている。このため、当該法科大学院の教育を通じて、教育の理念及び目標が達成されていないと判断する。
  • 当該法科大学院においては、平成31年度から学生募集を停止し、今後の学生数の増加が見込めない状況で、多くの授業科目で履修者が10人を下回っており、双方向的又は多方向的な討論型の授業を実施するに当たり、教育組織として規模が小さくなりすぎていることから、同時に授業を行う学生数が、適切な規模に維持されていない。ただし、学生募集を停止しており、当該状況を是正することは困難である。
  • 当該法科大学院においては、平成31年度から学生募集を停止し、今後の学生数の増加が見込めない状況で、多くの授業科目で履修者が10人を下回っており、双方向的又は多方向的な討論型の授業を実施するに当たり、教育組織として規模が小さくなりすぎていることから、各授業科目の目的を効果的に達成するため、双方向的又は多方向的な討論を行うなどの授業科目の性質に応じた適切な方法で授業を行うことが容易ではないこと、また、授業の効果を十分に上げられるよう、授業時間外における学習を充実させるため学生相互の間においてグループ学習を行うことが困難となるなど、法科大学院における授業の実施に当たって重大な課題がある。
  • 入学定員充足率が平成26年度から平成30年度において50%を下回っているほか、平成26年度、平成28年度、平成29年度及び平成30年度における入学者数が10人を下回っており、所定の入学定員と著しく乖離している。ただし、学生募集を停止しており、当該状況を是正することは困難である。
  • 入学定員充足率が平成26年度から平成30年度において50%を下回っており、前回評価時から是正が図られておらず、当該状況を是正するための抜本的な改善措置が講じられていない。ただし、学生募集を停止しており、当該状況を是正することは困難である。
  • 司法試験の合格率が低迷している中で、司法試験の合格状況を抜本的に改善する取組が行われているとは言い難いこと、また平成31年度から学生募集を停止しており、当該法科大学院の教育を通じて教育の理念及び目標を達成することが困難であることから、自己点検及び評価の結果が当該法科大学院における教育活動等の改善に活用されるには至っていない。

5.選択評価等の結果

(1)大学

〔選択評価事項C「教育の国際化の状況」〕(国立1大学)

  • 目的の達成状況が良好である。
    岡山大学

    ※評価結果は、「極めて良好」、「良好」、「おおむね良好」、「不十分」の4段階で評価。

評価結果のポイント

  • 平成24年4月入学者から、国際バカロレア入試を全国の国公立大学に先駆けて導入し、さらに平成27年度入試からは、すべての学部で国際バカロレア入試による選抜を行っている。秋入学にも対応している。特に、医学部医学科では、定員5人を明示して実施している。平成24年4月から導入している国際バカロレア入試について、平成25年度入試の結果を受け、平成26年度入試の出願時には条件を緩和し、志願者が出願しやすくなるように改善している。
  • インフラ整備として、国際学生シェアハウスを自己資金で建設し運用を開始し、ソーシャル・ラーニング・スペースL-cafeの拡充を進めるなど、国際化のための学修支援サポートがハード面・ソフト面ともに強化されている。さらに、受入留学生等に対するメンタルヘルス対策を平成30年度から開始している。
  • 海外生(30人)と国内生(30人)が、英語を共通言語として共に学ぶ学士課程プログラムである多様性を軸とするグローバル・ディスカバリー・プログラムを文理融合の全学プログラムとして開設し、英語のみで卒業できる「ディスカバリー専修トラック」と、学部授業を組み合わせて履修する「学部・学科横断型マッチング・トラック」とを設置している。海外の高校訪問(平成27年度43校、平成28年度114校、平成29年度67校)などで学生募集に努め、AO入試(国際選考30人、国内選考30人)及び国際バカロレア入試(若干名)で選抜し、海外生は平成29年10月に第1期生31人が16カ国より入学している。

(2)高等専門学校

評価結果

〔選択的評価事項A「研究活動の状況」〕
(国立6校)

〔選択的評価事項B「地域貢献活動等の状況」〕
(国立6校)

S:目的の達成状況が非常に優れている。
A:目的の達成状況が良好である。
B:目的の達成状況がおおむね良好である。
C:目的の達成状況が不十分である。

評価結果は、「目的の達成状況が非常に優れている」、「目的の達成状況が良好である」、「目的の達成状況がおおむね良好である」、「目的の達成状況が不十分である」の4段階で評価