欧州連合欧州連合European Union

ボローニャ・プロセスに関する主な合意文書・宣言

arrow 1997年 リスボン承認規約
arrow 1999年 ボローニャ宣言
arrow 2001年 プラハ・コミュニケ
arrow 2003年 ベルリン・コミュニケ
arrow 2005年 ベルゲン・コミュニケ
arrow 2007年 ロンドン・コミュニケ
arrow 2009年 ルーヴァン・コミュニケ
arrow 2010年 ブダペスト・ウィーン宣言
arrow 2012年 ブカレスト・コミュニケ
arrow 2015年 エレバン・コミュニケ
arrow 2018年 パリ・コミュニケ
arrow 2020年 ローマ・コミュニケ

 主な質保証、学生交流の仕組み

arrow 欧州単位互換制度
European Credit Transfer and Accumulation System (ECTS)
arrow ディプロマ・サプリメント
Diploma Supplement (DS)
arrow 欧州チューニング
Tuning Educational Structures in Europe
arrow 欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン
Standards and Guidelines for Quality Assurance in the European Higher Education Area (ESG)
arrow 欧州資格枠組み
European Qualifications Framework (EQF)
arrow 欧州高等教育圏資格枠組み
Framework of Qualifications for the European Higher Education Area (QF-EHEA)
arrow エラスムス計画
European Community Action Scheme for the Mobility of University Students (ERASMUS)
arrow エラスムス・ムンドゥス計画
Erasmus Mundus
arrow エラスムス・プラス
Erasmus+
arrow エラスムス・プラス 2021-2027
Erasmus+2021-2027

 


ボローニャ・プロセスに関する主な合意文書・宣言

リスボン承認規約

正式名称

Lisbon Recognition Convention

策定主体

欧州評議会/UNESCO

策定(実施)年

1997年

概略

正式名称は「欧州地域における高等教育に関する資格の承認に関する規約」(Convention on the Recognition of Qualifications concerning Higher Education in the European Region)といい、1997年4月8日から11日にかけてリスボンで行われた代表者会議で採択された。

加盟国に対し、他国からの高等教育機関への進学や就職を容易にするために、他国の学位・資格について、実質的な相違がなければ自国の類似した学位・資格として承認すること、学生や雇用主、高等教育機関等に対して、外国の学位・資格の承認に関する情報提供を行う国内情報センター(NIC)を設立すること、高等教育機関に対して、ディプロマ・サプリメント(学位証書補足資料)の発行を促進させることなどが盛り込まれている。

リンク

https://www.coe.int/en/web/conventions/full-list/-/conventions/treaty/165 

ボローニャ宣言

正式名称

Bologna Declaration

策定主体

欧州高等教育大臣会合

策定(実施)年

1999年

概略

1999年6月19日にイタリアのボローニャで、欧州29か国の高等教育担当大臣が調印した宣言。2010年までの欧州高等教育圏(European Higher Education Area: EHEA)の確立に向けて、主に以下の課題の達成に努力することで各国の大臣が署名した。なお、「ボローニャ・プロセス」とは、本宣言から始まった欧州における高等教育システムの改革に関する、一連の流れを指す。

<ボローニャ宣言の要旨>

  • 理解しやすく比較可能な学位制度を採用すること。また、ディプロマ・サプリメント(学位・資格の学修内容を示した様式)を導入すること。
  • 学士課程と大学院課程の2段階の学修構造をすべての国に導入すること。学士は修業年限3年以上の課程を前提とし、欧州の労働市場で適切なレベルの資格とし、大学院課程の学位は、欧州で共通して修士号・博士号とすること。
  • 学生・教職員の自由な移動を阻む障害を取り除き、流動化(モビリティ)を促進させること。
  • 欧州レベルの単位互換制度を確立させること。
  • 質保証における比較可能な基準と方法を開発し、欧州レベルの協力を進めること。
  • 高等教育(カリキュラム開発、機関間協力、学生・教職員流動化促進のための方策、学習、教育訓練、研究の統合プログラム)における欧州的特徴を確立させ、それを促進させること。

本宣言で提唱されたプロセス達成に向けて、2001年から2年ごとに大臣会合を開催。改革内容の進捗プロセスの把握や活動方針の追加が行われ、会議ごとに共同声明(コミュニケ)が発表されている。2009年からは大臣会合と合わせて、ボローニャ参加国と日本を含むその他の国との高等教育における国際連携に関する議論とパートナーシップ構築の場となることを目指した、ボローニャ政策フォーラム(Bologna Policy Forum)が開催されている。

※なお、ボローニャ・プロセスの関連文書(これまでに開催された会合の声明等)は、以下のリンク先(EHEAウェブサイト)で閲覧することができます。

リンク

https://pjp-eu.coe.int/bih-higher-education/bologna-process.html 

プラハ・コミュニケ「欧州高等教育圏の確立にむけて」

正式名称

Towards the European Higher Education Area - Prague Communique

策定主体

欧州高等教育大臣会合(プラハ会合)

策定(実施)年

2001年

概略

2001年、プラハに欧州の高等教育大臣が集まり、1999年のボローニャ宣言以降の進捗を確認し、次の会合までの2年間の方針や優先事項について協議を行い、採択された内容がプラハ・コミュニケとして発表された。本会合において、キプロス、クロアチア、トルコ、リヒテンシュタインの4か国が新たにボローニャ・プロセスに署名し、参加国は33に拡大した。

プラハ・コミュニケでは、ボローニャ・プロセスに以下の項目が新規に追加された。

  • 欧州の経済的競争力を高めるために、生涯学習(lifelong learning)を高等教育の重要な要素に位置づける。
  • 高等教育機関と学生をボローニャ・プロセスに積極的に参加させる。学生については、ボローニャ・プロセスの意思決定や大学での教育内容にも積極的に参加させる。EUA(欧州大学協会)、EURASHE(欧州高等教育機関協会)、ESIB(欧州全国大学連盟)(1)、Council of Europe(欧州評議会)の4組織は、ボローニャ・フォローアップ・グループ(2)の諮問メンバーとして参加する。
  • 欧州内外の学生に、欧州高等教育圏の魅力をアピールしていく。
  • ボローニャ・プロセスが社会に与える影響に注目していく。

質保証については、質保証ネットワーク間の相互協力と、教育の質の確保と学位・資格の通用性促進に質保証が果たす意義が謳われ、質保証に関する欧州共通の参照枠組みの構築と優良事例の共有にむけて、高等教育機関、各国質保証機関、ENQA(欧州高等教育質保証協会)等が協力していくことが提言された。

(1)ESIBは、現在のEuropean Students Union: ESU(欧州学生ユニオン)の前身
(2)ボローニャ・フォローアップ・グループは、ボローニャ・プロセス参加国の代表及び欧州委員会で構成。EU議長がチェアを務める。ボローニャ・プロセスにおける質保証、学位・資格の認証、単位互換、ジョイント・ディグリーの策定、流動性(モビリティ)、ボローニャ・プロセスの拡大、生涯学習、学生参加等のテーマに関するセミナーの企画・立案を主な任務とする。

リンク

https://pjp-eu.coe.int/bih-higher-education/bologna-process.html 

ベルリン・コミュニケ「欧州高等教育圏の実現を目指して」

正式名称

Realising the European Higher Education Area - Berlin Communique

策定主体

欧州高等教育大臣会合(ベルリン会合)

策定(実施)年

2003年

概略

欧州の高等教育担当大臣レベルで合意した声明。ボローニャ宣言を再確認したうえで、2005年までに各国が導入にむけて努力することで、質保証システムの構築を含む事項が新たに提案され、ベルリン・コミュニケとして発表。旧ユーゴスラヴィア諸国を含む40か国が署名した。

<ベルリン・コミュニケの主な内容>

◇ 質保証
質保証の共通基準・方法論構築の必要性、機関自身による内部質保証の重要性(各機関が持つ自治・自律の原則に基づき、質保証に関する最終的な責任は機関自身にあること)を強調。各国の質保証システムは、2005年までに以下の実施にむけて努力する。

  • 質保証に関わる団体及び機関の役割を明確にすること。
  • プログラムまたは機関別評価(内部評価及び第三者評価、評価への学生の関与、結果の公表)を実施すること。
  • アクレディテーション(accreditation)、認証(certification)等の質保証システムを構築すること。
  • 質保証における国際連携協力、ネットワーク作りを進めること。

欧州レベルの質保証については、ENQA(欧州高等教育質保証協会)に対し、EUA(欧州大学協会)等との連携により、質保証に関する欧州基準、手続き、ガイドラインの開発及び適切なピア・レビューシステムとアクレディテーション機関の確保を進め、2005年の教育大臣会合で進捗の報告を要求した。

◇ 学位構造

  • 学士課程(学士号)、修士課程(修士号)、博士課程(博士号)の学位構造を促進させるため、学位資格のレベルや内容、学習成果等について各国比較を可能にすること。

◇学生・教職員流動化(モビリティ)の推進

◇単位制度の構築

  • 学生の流動性向上と国際的なカリキュラム開発促進のため、欧州レベルの単位制度(ECTS)が果たす役割を重要視すること。
  • ECTSを単位の読み替えのみではなく、履修の蓄積を証明する仕組みにし、欧州高等教育圏内でさらに普及させること。

◇学位の認定

  • 2005年より、ディプロマ・サプリメント(学位・資格の学修内容を示した様式)の本格的導入を目指すこと。

リンク

https://pjp-eu.coe.int/bih-higher-education/bologna-process.html 

ベルゲン・コミュニケ「欧州高等教育圏構築の目標達成に向けて」

正式名称

The European Higher Education Area - Achieving the Goals

策定主体

欧州高等教育大臣会合(ベルゲン会合)

策定(実施)年

2005年

概略

2005年5月に、ノルウェーのベルゲンで開催された高等教育大臣会合で採択された宣言。本会合で、新たにアルメニア、アゼルバイジャン、グルジア、モルドバ、ウクライナの5か国がボローニャ・プロセスに加盟し、参加国は45に拡大した。

ボローニャ・プロセスのパートナーとしての高等教育機関、教職員、学生の重要性を再確認するとともに、雇用者を含む全ての高等教育利害関係者からの支援がボローニャ・プロセスの目標達成に不可欠であることが強調されている。また、博士プログラムにおける研究活動の促進、質の高い高等教育への参加機会の拡充、ボローニャ・プロセスの国際化を視野に入れた欧州外の地域との交流等が重点事項として掲げられている。

質保証に関する内容は以下のとおり。

  • 質保証に関わる団体及び機関の役割を明確にすること。
  • ENQA(欧州高等教育質保証協会)が関係機関(EUA、EURASHE、ESIB)(1)とともに提案したガイドライン「欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン」(Standards and Guidelines for Quality Assurance in the European Higher Education Area (ESG))を採択し、提案内容の実現にむけて努力する。
  • 国ごとの資格枠組み(national qualifications frameworks)を導入する。
  • 大学等によるジョイント・ディグリーの授与を認め、ディグリーの認証を行う。
  • 既習歴を認定する手続きの構築など、多様な学びの促進にむけた基盤を整備する。
  • ENQA、Education International (EI) Pan-European Structure(汎欧州国際教育機構)及びUnion of Industrial and Employers’ Confederations of Europe: UNICE(欧州産業・雇用者連盟)(2)は、ボローニャ・フォローアップ・グループの諮問メンバーに新たに加わる。
  • 各国の大臣は、ESGに基づき、各国質保証機関を対象とするピアレビューを導入する。
  • 質保証結果の相互認証を促進する観点から、国に認証された質保証・アクレディテーション機関間の連携協力の重要性を強調する。

1)EUA(欧州大学協会)、EURASHE(欧州高等教育機関協会)、ESIB(欧州全国大学連盟)。この3機関は、Council of Europe(欧州評議会)とともに2001年のプラハ会合において、ボローニャ・フォローアップ・グループの諮問メンバーとして参加することが合意された。
2)UNICEは、2007年1月23日付けで、BUSINESSEUROPEに名称変更。

リンク

https://pjp-eu.coe.int/bih-higher-education/bologna-process.html 

ロンドン・コミュニケ「グローバル環境における欧州高等教育圏」

正式名称

Towards the European Higher Education Area: responding to challenges in a globalised world ? London Communique

策定主体

欧州高等教育大臣会合(ロンドン会合)

策定(実施)年

2007年

概略

2007年5月にロンドンで開催された大臣会合で採択された宣言。本会合では、欧州高等教育圏(European Higher Education Area: EHEA)への参加国は46に拡大した。ボローニャ・プロセスが進み、欧州以外の地域への影響が進むなか、他地域との協力がボローニャの協議事項になりつつあることが謳われている。

<ボローニャ参加国と他地域との協力にかかる内容>

  • ボローニャ・プロセスでの改革が、国際的な関心を呼び、欧州と他地域のパートナーとの間で、学位・資格の認証やパートナーシップに基づく協働、相互理解、ボローニャ・プロセスの価値等について活発な議論が行われていることを歓迎する。
  • 他地域において、高等教育システムをボローニャの枠組みと調整する試みが進められていることを歓迎する。
  •  「グローバル環境における欧州高等教育圏」戦略を採択する。本戦略の核となるのは、ボローニャ公式ウェブサイト等によるEHEAに関する情報発信の充実、EHEAの魅力と競争力の促進、パートナーシップに基づく協働、政策対話の強化、学位・資格認証の推進。これらは、OECD/UNESCOの「国境を越えて提供される高等教育の質保証に関するガイドライン」との関連で進める。

以上を確認したうえで、2009年までの取組みの優先事項として、流動性(学生・教員の流動性促進、流動性を測る方法の開発)、社会における高等教育の役割、データ収集、卒業生の就業力(employability)、グローバル環境における欧州高等教育圏、進捗の現状把握が設定された。また、2010年以降は、EHEAにかかる国際連携の強化を優先して行うことが合意された。

リンク

https://pjp-eu.coe.int/bih-higher-education/bologna-process.html 

ルーヴァン・コミュニケ「ボローニャ・プロセス2020年:欧州高等教育圏の新たな10年」

正式名称

The Bologna Process 2020 - The European Higher Education Area in the new decade

策定主体

欧州高等教育大臣会合(ルーヴェン/ルーヴァン=ラ・ヌーヴ会合)

策定(実施)年

2009年

概略

欧州の高等教育大臣レベルで、ボローニャ・プロセスの進捗を確認・評価し、2010年以降も主に以下の実現に向けて引き続き欧州・国・機関レベルで取り組むことで合意した声明。46か国が署名した。

<ルーヴァン・コミュニケの主な内容>

  • すべての学生に質の高い教育を受ける機会を提供すること。
  • 生涯学習を促進させること。
  • 欧州域内での国境を越えた就職を促進させること。
  • 学生の視点から学習成果と教育目標を策定し、学習成果の観点にたったカリキュラム改革を進めること。
  • 教育、研究、イノベーションにおける連携を強化すること。
  • 高等教育機関における教育研究活動のグローバル化を推進すること。
  • 学習あるいは就職を目的とした流動化(モビリティ)の機会を促進させ、その質を向上させること。

リンク

_

欧州高等教育圏に関するブダペスト・ウィーン宣言

正式名称

Budapest-Vienna Declaration on the European Higher Education Area

策定主体

欧州高等教育大臣会合

策定(実施)年

2010年

概略

2010年3月11日から12日にかけて、ブダペストおよびウィーンで行われた大臣会合で合意した声明。ボローニャ宣言から10年が経過した記念すべき会合で、欧州高等教育圏(European Higher Education Area: EHEA)の構築が宣言された。

本会合では、ボローニャ・プロセスが確実に前進して成果をあげてきているとしつつ、高等教育機関の現場(教職員と学生)からの声を更に反映して改革を進めることが必要である旨、共通認識を持った。

また、ルーヴァン・コミュニケ(2009年)で合意した事項を進め、学生を中心に置いた学習環境を推進することで合意した。

今回新たにカザフスタンが加わり、EHEAへの参加国は47となった。(EHEAについては、1999年のボローニャ宣言で2010年の確立に向けて課題の達成に努力することで29か国の高等教育大臣が署名した)

リンク

https://www.edu.ro/sites/default/files/u39/Budapest-Vienna%202010.pdf 

ブカレスト・コミュニケ「欧州の可能性への期待と欧州高等教育圏の強化にむけて」

正式名称

Making the Most of Our Potential: Consolidating the European Higher Education Area ? Bucharest Communique

策定主体

欧州高等教育大臣会合(ブカレスト会合)

策定(実施)年

2012年

概略

2012年4月26日から27日にかけて、ルーマニアのブカレストで開催された、ボローニャ・プロセスに関する第8回大臣会合で合意された宣言。すべての学生に質の高い教育を提供することが、ボローニャ・プロセスの最大の目標である旨、再確認され、欧州高等教育圏(EHEA)構築に向けたプロセスの最初の10年の進捗を評価しつつも、次の10年(~2020年)に向け、今後優先して取り組むべき課題(質の高い教育の提供、学生の就業力の向上、より質の高い学習のための流動性(モビリティ)の強化)を打ち出した。

また、本会合では、EHEAにおける流動性(モビリティ)に関する戦略(Mobility Strategy 2020 for the European Higher Education Area (EHEA): Mobility for Better Learning)も打ち出され、2020年までに、欧州の学生の20%のモビリティを達成するという目標が掲げられ、これに向けて取り組むべき内容が示された。

<ブカレスト・コミュニケの主な内容>

  • 高等教育へのアクセス拡大に向けた各国の取組みを歓迎するとともに、修了率の向上に関して努力する。
  • 生中心の学習の重要性を再確認する。学生中心の学習とは、学生の学びを主体とした革新的な教育を意図するものであり、その実現に向けた取組みを続けていく。高等教育機関や学生と協働し、充実した支援体制を備えた魅力的な教育・学習環境を提供していく。
  • 質保証は、相互信頼の構築と、EHEAが提供する教育(国境を越えた共同教育を含む)の魅力を高めるのに不可欠な要素であることを再認識する。ENQA(欧州高等教育質保証協会)の「欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン(ESG)」(2005年)の見直しを行い、明確性、適用可能性、有用性の面で改善を図る。
  • 高等教育への資金及びガバナンスに関する開かれた対話の必要性を認識する。
  • すべての学生に質の高い高等教育を提供するとともに、学生の就業力を高める支援を行う。
  • 学習成果の実質的な導入が、EHEAの強化に不可欠である。学習単位と学習成果・学習量との関連付け、成績評価プロセスにおける学習成果の視点の導入を高等教育機関に働きかけていく。
  • 各国で資格枠組み開発にかかる取組みが進展していることを歓迎する。資格枠組みの構築により、学位・資格の中身が分かりやすく比較可能となり、より柔軟で開かれた高等教育システムの整備が可能となった。
  • 流動性(モビリティ)の強化は、質の高い高等教育、学生の就業力の向上、EHEAと他地域との協働の促進に不可欠な要素である。2020年までの流動性に関する戦略に即して、学生の流動を推進するプログラムに対する国の財政支援・ローン制度の利便性向上に向けた取組みを強化する。
  • 学位や学習歴(インフォーマルな形態による学習経験を含む)の適切な認証が、EHEAの中核にあることを再確認する。効率的な学位・学習歴の認証を阻む制度的な障害を取り除き、国際的に比較可能な学位・資格のシステムを構築することで、学位や学習歴を自動的に認証する仕組みを作っていく。
  • Nuffic(オランダ高等教育国際協力機構)の「欧州地域の資格認証に関する手引き(European Area of Recognition Manual)」(2012年公表)を歓迎し、これを国外で取得された学位・資格の認証にかかるガイドライン及び優良事例集として、各国の資格認証機関が活用すること、また、高等教育機関が、外国学位の認証にかかる機関内部の手続きを検証する際に、本手引きを参照することを推奨する。
  • 欧州高等教育圏のグローバル化推進という観点から、欧州の高等教育機関が、他地域の機関との共同教育プログラムの開発を進めるよう働きかけていく。国レベルの制度に起因する障害を取り除き、国際的な連携や学生流動を推進することを目的に、共同教育プログラムに関する各国の規則や導入のされ方などの実態を調査していく。
  • 欧州と他地域との協力、EHEAの欧州以外の地域への開放がこれからのEHEA成功の鍵である。2005年のロンドン会合で合意された「グローバル環境における欧州高等教育圏」戦略の重要性を再認識するとともに、EHEAのさらなる国際化に資するガイドラインの作成・提供を視野に、本戦略の進捗を評価する。

リンク

http://www.ehea.info/Upload/document/ministerial_declarations/Bucharest_Communique_2012_610673.pdf  

エレバン・コミュニケ

正式名称

Yerevan Communique

策定主体

欧州高等教育大臣会合(エレバン会合)

策定(実施)年

2015年

概略

2015年5月14日から5月15日にかけて、アルメニアのエレバンにて開催された、EHEA(欧州高等教育圏)大臣会合において採択された宣言。47か国の代表者が欧州地域の高等教育統合に向けた取り組みにおける2020年までの方向性について協議し、またこれまでのボローニャプロセスを振り返り、具体的な取組み内容の見直しの必要性を明らかにした。

<エレバン・コミュニケの主な内容>

  • ボローニャ・プロセスにより、EHEA内の学生、卒業生の資格や学習期間の認証が行われ、EHEA域内の移動が可能になった。結果として、学習プログラムによる有用な能力、技術、知識の提供は学生の学習継続や労働市場に好ましい影響をもたらし、高等教育機関は国際社会で活発に活動するようになった。
  • 制度改革にはむらがあり、必ずしもツールが適切に使われているとはいえず、高等教育の制度改正を続ける必要性がある。
  • EHEAは経済不況や高い失業率、移民の増加や人口構成の変化、国家間紛争といった深刻な課題に直面する一方、学生や教員のモビリティは、EHEA加盟国間の相互理解を深めている。また、社会経済に影響をもたらす知識や技術の急速な発達は、高等教育や調査における変化において重要な役割を果たしている。
  • 共通の目標を追求し、対話によって上記の課題に対応し、機会を最大化するという点でEHEAは重要な役割を担っている。当初のボローニャ・プロセスのビジョンを刷新し、各国の高等教育制度における信頼を確保するという新たなビジョンの下、EHEAの構造を強化すべきである。具体的には、2020年までの優先事項として、自動認証の実現、インクルーシブ*な社会の建設に資する教育の実現、加盟国の国民が求める能力や技術を提供する教育機会の実現を掲げる。
  • 学生や教員が学問的な権利を行使できるよう支援する。また、インクルーシブ*な社会を築き、欧州の市民権を強化するために政治的、宗教的な寛容性、文化間の理解の向上に努める高等教育機関を支援する。

<4つの課題>

  • 学習と教授の重要性と質を向上させる。具体的には、学習成果の透明性確保、柔軟な学習等の実施を通して学生本位の学習を実現する。あらゆる学習段階において、教育・学習・研究の連携を強化する。創造的、革新的な活動を促進するような動機を提供する。学習プログラムは、学生の能力を発展させ、学習意欲や社会的なニーズを満たすようなもので、かつ、透明性と柔軟性を伴うものであるべきである。加えて、質に関する教育や教育能力を高めるための機会を提供することが不可欠である。
  • 卒業生の雇用可能性を育成する。授業における実践と理論のバランスをとり、キャリア開発を実施することによって、教育と労働市場の関連性を強化する。学生の能力と職業選択の幅を広げるために、学生の国際的なモビリティを促進していく。
  • 高等教育に関する制度をよりインクルーシブ*なものにする。生涯学習をはじめ、様々な学習機会を提供することによって、異なる背景を持つ学習者が教育にアクセスできるようにする。学生や教員のモビリティを促進する。
  • 合意に基づいた高等教育の構造改革を実施する。学位制度や質保証における共通の基準を設定し、ジョイントプログラムやジョイントディグリー制度における協調は、EHEAにとって不可欠である。合意事項について、各国が一貫して履行することに意味があり、履行しなければ、EHEAの信用性や機能が損なわれる。

次回会合は、2018年にフランスのパリで行われる予定となっている。

*インクルーシブ:ユネスコの定義によれば、全ての学生が基礎的な学習ニーズを満たす平等な教育にアクセスすることができ、生活を豊かにすることができる状態のことである。

リンク

https://uluslararasi.yok.gov.tr/Documents/Uluslararasilasma/erivan_bildirgesi_2015.pdf  

パリ・コミュニケ

正式名称

Paris Communiqué

策定主体

欧州高等教育大臣会合(パリ会合)

策定(実施)年

2018年

概略

2018年5月24日~25日にかけて、フランス・パリにおいて開催された、European Higher Education Area (EHEA)(欧州高等教育圏)大臣会合において採択された宣言。48カ国の代表者が本宣言に署名した。各国代表者は、2020年までの欧州地域の高等教育統合に向けた取組*の進展を評価する一方、今後さらに欧州で取り組むべき事項について協議し、共同声明(コミュニケ)及び関連文書をとりまとめた。共同声明においては、欧州で失業、社会的格差の広がり、移民・難民の問題、テロ、右傾化の動き等の社会問題が広がるなか、問題解決に向けた高等教育の社会的役割について強調された。
* 欧州の学生移動を促進するための学位システムの共通化や欧州共通的な単位互換制度の構築等、欧州の高等教育改革に係る取組。改革に関する一連の流れを「ボローニャ・プロセス」と呼ぶ。

<パリ・コミュニケの主な内容>

  • EHEA(欧州高等教育圏)構築の成果
    ボローニャ・プロセスのこれまでの成果を評価する。本プロセスにより、高等教育にかかる目標・政策が欧州レベルで策定・合意され、これらをもとに各国が自国の高等教育制度や高等教育機関改革に活かすというユニークな仕組みを作り上げた。大規模な学生移動(モビリティ)を可能とする基盤を作り、各国の高等教育制度の比較可能性や透明性を向上させたほか、教育制度の質や魅力を高めた。
  • 高等教育の基本的価値の保証
    学問の自由や誠実性(アカデミック・インテグリティ)、高等教育のガバナンスにおける学生や教員の参画、社会に対する高等教育の責任は、欧州高等教育圏が尊重する基本的価値であり、欧州全体の政策対話や連携協力の強化を通じて保証していく。
  • 社会問題への対応
    失業、社会的格差、移民・難民の問題、テロ、右傾化の動き等の社会問題の解決に高等教育が果たす役割は大きい。インクルーシブ**で結束力のある社会の実現に向け、教育機関が社会的責任を十分果たせるよう、政策策定等を通じて支援していく。

次回の欧州高等教育大臣会合は、2020年6月にイタリア・ローマで行われる予定となっている。

** インクルーシブ:すべての学生が基礎的な学習ニーズを満たす平等な教育にアクセスすることができ、生活を豊かにすることができる状態。(UNESCOの定義より)

パリ・コミュニケの内容の詳細については、こちら(機構国際連携ウェブページQA UPDATES 2018/6/19投稿記事)

リンク

https://www.diplomatie.gouv.fr/en/french-foreign-policy/europe/news/article/european-higher-education-area-ehea-ministerial-conference-paris-communique-25  

ローマ・コミュニケ

正式名称

Rome Communiqué

策定主体

欧州高等教育大臣会合(ローマ会合)

策定(実施)年

2020年

概略

2020年11月19日に開催された、European Higher Education Area (EHEA、欧州高等教育圏)大臣会合において採択された宣言。本会合はオンラインで開催され、49カ国の代表者が参加した。本宣言では、今後10年間の政策の指針として、コロナ禍においても全ての学生が質の高い高等教育を受けられるようにすること、高等教育機関が社会問題の解決に取り組めるように適切な支援を行うこと、そしてこれらの実現のためにEHEA内でより効果的に連携し、緊密に対話を行うこと等が示された。

<ローマ・コミュニケの主な内容>

●EHEAのビジョン:
EHEAは学生、教職員及び卒業者がそれぞれ修学、教育及び研究を行うための自由な移動が保証された圏域となる。
→ビジョンの実現のために2030年までにインクルーシブ(inclusive)で革新的(innovative)かつ相互接続された(interconnected)EHEAとなるよう取り組んでいく。
  • “Inclusive”(インクルーシブ)
    社会的事情に関わらず全ての人に平等な教育機会を提供する、高等教育の社会的包摂性はEHEAの中核である。そのため、EHEAはデジタル技術によりもたらされる新たな機会を大いに活用し、ソーシャル・インクルージョンの推進と教育の質の向上に取り組む。
  • “Innovative”(革新性)
    EHEAは、高等教育機関が社会的課題の解決に取り組むことを支援する。マイクロクレデンシャルにつながる学習を含め、より小さなまとまりの柔軟な学習が高等教育機関でどのように/どの程度、定義・開発・実施・承認できるのか、その調査をBFUGに要請する。また、EHEAは高等教育機関の学習、教育、研究等の諸活動におけるデジタル技術の活用を支援するとともに、すべての人にデジタルスキル等が身につくよう支援する。
  • “Interconnected”(相互接続性)
    協力とモビリティの意義、そして学生等の物理的な移動によるメリットを認識の上、新型コロナウイルスに関係なく、EHEAの卒業者の少なくとも20%が海外での留学等の経験をもつという目標を再確認する。加えて、全ての学習者がカリキュラムの国際化や本国機関にいながらデジタル技術等を用いた国際的な経験を通じて国際的・異文化的コンピテンシーを修得できるよう取り組むとともに、授業の形式(対面、オンライン、またその併用)を問わず何らかの形でモビリティを経験ができるよう取り組む。

このほかに前回(2018年)の会合で採択された今後注力する3つの取組(Key Commitments)について、これらの取組が着実に実施されており、引き続き取り組んでいくことが確認された。

①資格枠組と欧州単位互換制度(ECTS)
②リスボン規約とディプロマサプリメント
③欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン(ESG)に基づく質保証

 

次回の欧州高等教育大臣会合は、2024年にアルバニアで行われる予定となっている。

 

ローマ・コミュニケの内容の詳細については、こちら(機構国際連携ウェブページQA UPDATES 2021/1/8投稿記事)

リンク

http://www.ehea.info/Upload/Rome_Ministerial_Communique.pdf  

主な質保証、学生交流の仕組み

欧州単位互換制度

正式名称

European Credit Transfer and Accumulation System: ECTS

策定主体

欧州委員会

策定(実施)年

1999年のボローニャ宣言において提案

概略

教育プログラムの達成のために求められる学習量に基づく単位システム。欧州内での留学時における学習の認定を保証するための共通の手続きとして、ボローニャ宣言に基づき欧州委員会のイニシアチブにより整備。学習量に応じた単位の蓄積と読み替えを通じて、欧州での国境を越えた学生流動を促進させるとともに、複数の機関による国際的な共同教育プログラムを推進する。

原則として、1年間(1学年歴)の学修をおおむね60ECTS単位(1,500から1,800時間程度)の学習量とし、1ECTS単位は、25~30時間のフルタイム学生の学習量(面接指導、課題読書、自習、試験のプレゼンテーション等を含む)に換算する。本単位互換制度では、各大学は課程における各講義概要に想定される学習成果を記述し、各学習成果ごとに学習量を示す単位数を表示する。

リンク

https://ec.europa.eu/education/resources-and-tools/european-credit-transfer-and-accumulation-system-ects_en 

ディプロマ・サプリメント

正式名称

Diploma Supplement: DS

策定主体

欧州委員会

策定(実施)年

1999年のボローニャ宣言において提案

概略

学生が取得した学位・資格の内容について示した欧州地域における統一的な様式による説明書。高等教育機関における課程等の教育プログラムの修了者に対し、ディプロマ等の高等教育修了証明書に添付して発行する。様式は欧州委員会、欧州評議会及びUNESCOが共同策定したものであり、各国の高等教育機関はこの雛型に沿って作成・発行する。

欧州高等教育圏の構築を推進するボローニャ・プロセスのもと、欧州で国境を越えた教育の提供と学生の流動が活発化し、国外で取得した学位・資格の認定が課題となる中、共通様式のディプロマ・サプリメントは、資格に関する公的かつ透明性ある説明文書としての役割を持つ。

ディプロマ・サプリメントには主に以下の事項に関する情報が盛り込まれる。

  • 学位・資格の取得者に関する情報
  • 学位・資格の基本情報
  • 学位・資格のレベルに関する情報
  • プログラム内容と学習成果に関する情報
  • 学位・資格の機能に関する情報
  • その他の追加情報
  • ディプロマ・サプリメントの発行に関する情報
  • 当該国の高等教育制度の概要

ディプロマ・サプリメント様式
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/024/siryou/04010804/007.htm

リンク

https://ec.europa.eu/education/diploma-supplement_en 

欧州チューニング

正式名称

Tuning Educational Structures in Europe

策定主体

欧州委員会及び欧州の大学教員グループ

策定(実施)年

2000年より(継続中)

概略

学問分野ごとに欧州各国の教育カリキュラム構造や履修単位の換算、教授方法を調整(tuning)し、各国のカリキュラムを分かりやすくかつ比較可能とした参照ツールで、各機関において単位や学位の認定にかかる判断に資することを目的としたもの。欧州委員会の支援を受け、欧州の複数の大学の教員グループの自主的な取組みとして2000年に開始。これまでに化学、物理学、ビジネス・経済学、教育学、数学、地質学、歴史学、ヨーロッパ学、看護学の9領域において、カリキュラムごとの学位プログラムの教育や学習目標、学習量、成績評価、質の向上、質保証について整理。

チューニングは以下のプロセスに沿って行われる。

  1. 調整開始にあたって基本的な条件の確認
  2. 学位の概要の理解
  3. プログラムの目標及び学習成果(知識、理解、技能)の整理
  4. 学習成果の目標値(一般的能力及び分野固有の能力)の整理
  5. カリキュラムの必須内容や構造(モジュールや単位)の整理
  6. 目標となる学習成果を達成するためのカリキュラム編成及び教育活動の整理
  7. 教育・学習のアプローチ(方法、技術、様式等)及び成績評価の方法の整理
  8. プログラムの質を継続的に向上させる評価システムの開発

なお、チューニングは、各機関の多様性と自律の尊重を基本原則としており、各機関に適用を求めたり、各機関の教育専門家の学問的独立性を制限するものではない。

<チューニングにおける学習プログラムの科目群の例(欧州のビジネスと経済学>

出典:http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/025/gijiroku/__icsFiles/afieldfile
/2010/03/05/1291048_2.pdf

リンク

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欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン

正式名称

Standards and Guidelines for Quality Assurance in the European Higher Education Area (ESG)

策定主体

ENQA(欧州高等教育質保証協会)、ESU(欧州学生ユニオン)、EUA(欧州大学協会)、EURASHE(欧州高等教育機関協会)、EI(エデュケーション・インターナショナル)、BUSINESSEUROPE(ビジネスユーロップ)、EQAR(欧州質保証機関登録簿)

策定(実施)年

2005年(最新版:2015年)

概略

欧州地域における高等教育の質保証に関するガイドライン。2003年の欧州高等教育大臣会合(ベルリン会合)において、質の向上に関する基準作りが要請されたことを受け、ENQA(欧州高等教育質保証協会)がEUA(欧州大学協会)、EURASHE(欧州高等教育機関協会)及びESIB(欧州全国学生連盟)と協力し策定。高等教育機関及び質保証機関双方にとって共通の参照点となる内部質保証、外部質保証(第三者評価)ならびに外部質保証機関に関する欧州基準が示されている。但し、欧州全体に適用される唯一の質保証基準を設けてそれに基づいて一律に評価を行うという趣旨ではなく、国・地域間の違いをある程度認めたうえで共通の質保証基準を設けるもので、各質保証機関の多様性を尊重し、策定されている。2005年以降に第1版が策定されて以降、ボローニャプロセス全体での大きな進展、学生中心の学習・指導へのパラダイムシフトといった背景の変化を踏まえ、ESGの明確性、適用可能性、有用性の改善を図るため、2015年5月に改正ESGが策定された。

<改正ESGの章立て>
○ 第1部: 内部質保証に関する基準とガイドライン
1-1. 質保証の方針
1-2. プログラムの設計と承認
1-3. 学生中心の学習、教授及び評価
1-4. 学生の入学、進級、認定及び証明
1-5. 教員
1-6. 学習資源と学生支援
1-7. 情報管理
1-8. 情報公開
1-9. プログラムの継続的監督及び定期的評価
1-10. 周期的な外部質保証

○ 第2部: 外部質保証に関する基準とガイドライン
2-1. 内部質保証の考慮
2-2. 目的に沿った方法論の設計
2-3. 実施プロセス
2-4. ピアレビューの専門家
2-5. 成果に関する基準
2-6. 報告
2-7. 苦情と不服申立

○ 第3部: 質保証機関に関する基準とガイドライン
3-1. 質保証の活動、方針及びプロセス
3-2. 公的地位
3-3. 独立性
3-4. 活動の分析
3-5. 資源
3-6. 内部質保証と専門性
3-7. 質保証機関に対する周期的な外部の評価

リンク

https://www.enqa.eu/esg-standards-and-guidelines-for-quality-assurance-in-the-european-higher-education-area/ 

翻訳資料

欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン(ESG)

(翻訳:大学評価・学位授与機構、2016年1月)

欧州資格枠組み

正式名称

European Qualifications Framework: EQF

策定主体

欧州委員会

策定(実施)年

2008年

概略

欧州で用いられている資格・学位を欧州共通の視点で理解するための仕組み。これにより、労働者や学習者の国際的な流動性が高まり、生涯学習が促進されると見込まれている。

EQFは、各資格・学位を8段階(レベル1~レベル8)に分類し、当該資格取得に必要とされる知識(knowledge)、技能(skills)、能力(competence)に関する学習成果を示す。

学士レベル(高等教育第1期)に相当するレベル6は次のように示されている。

  • 知識: ある分野の仕事または学習の高度な知識を備えている(理論や原則の批判的理解を含む)。
  • スキル: 複雑かつ予測不可能な問題の解決に必要な専門的・最新の技能を備えている。
  • 能力: 複雑な技術的・専門的活動に対処し、個人やグループの能力発展のために責任を負うことができる。

<欧州資格枠組み(EQF)の8水準>
中央教育審議会キャリア教育・職業教育特別部会(第7回)配布資料

リンク

https://europa.eu/europass/en/european-qualifications-framework-eqf 

欧州高等教育圏資格枠組み

正式名称

Framework of Qualifications for the European Higher Education Area: QF-EHEA

策定主体

2005年の欧州高等教育大臣会合(ベルゲン会合)で採択

策定(実施)年

2005年

概略

欧州高等教育圏に属する国が、それぞれの国家資格枠組み(national qualifications framework)を制定するための指標となる資格枠組み。欧州各国の高等教育が、多様性と共通性のバランスを保つために定められている。
EHEA-QFを介することで、欧州各国の国家資格枠組みや学位の間の関係性が明確になる。

欧州高等教育圏資格枠組みの特徴は以下の通りである。

  • 各国が定められる枠組みの範囲を指定する
  • この範囲の中での多様性を尊重する
  • 国家資格枠組み間の比較を可能にする
  • 世界的視野に立つときに重要な、“欧州の”高等教育としての共通点を表現する

欧州高等教育圏資格枠組みは下記の3サイクル制によって構成される。

  • 第1サイクル(学士相当):180-240ECTS単位相当
  • 第2サイクル(修士相当):90-120ECTS単位相当。このうち最低60単位分は第2サイクルレベルでの学習でなければならない。
  • 第3サイクル(博士相当):ECTS単位の参考値なし。

また、この枠組みはoverarching frameworkという呼び方をされることもある。

リンク

http://www.ehea.info/Upload/document/ministerial_declarations/EHEAParis2018_Communique_AppendixIII_952778.pdf 

エラスムス計画

正式名称

European Community Action Scheme for the Mobility of University Students: ERASMUS

策定主体

欧州委員会

策定(実施)年

1987年

概略

EUの学生が他国の高等教育機関へ留学や企業への研修ができるよう支援するプログラム。1987年6月17日の開始当初は11か国3,244人の学生の参加であったが、開始25年間で270万人を超える学生と33か国の4,000を超える高等教育機関が参加するまでに成長した。現在では、欧州の参加国の学生の4%が参加するプログラムとなっている。また、高等教育機関の教員や職員も対象としており、1997年以来25万人が参加している。

エラスムス計画は、2007-2013年期においては、欧州委員会の生涯学習プログラムの活動の一つに位置付けられている。また、ボローニャ・プロセスの開始や欧州単位互換制度(ECTS)の創設に重要な役割を果たしており、当プログラムの成功がエラスムス・ムンドゥス(※1)の開始につながった。

2014年からはエラスムス・プラス(※2)という新しいプログラムを開始する予定。

※1)エラスムス・ムンドゥスについてはこちらを参照
※2)エラスムス・プラスについてはこちらを参照

リンク

https://erasmus-plus.ec.europa.eu/  (エラスムス計画に関する欧州委員会のウェブページは現在稼働していない。左記リンクは、後継プログラムにあたるエラスムス・プラスのウェブページ)

エラスムス・ムンドゥス計画

正式名称

Erasmus Mundus

策定主体

欧州委員会

策定(実施)年

2004-2008年(第1期)、2009-2013年(第2期)

概略

欧州とそれ以外の国・地域間の高等教育機関における奨学金プログラム及び学術交流の実施を通じて、欧州の大学連携を強め、高等教育の質を高めることを目的とした計画。学生・研究者のグローバルな流動化(モビリティ)を促進させ、異文化間交流と対話の場を提供するプロジェクトを支援。EU内の高等教育機関の協力と人材交流プログラムであるエラスムス計画の成功を受けて始まった。

2004年から2008年の第1期は、以下4つのアクションへの支援を行った。

  • アクション1: 少なくとも欧州3か国の3大学によって提供される、修士プログラムの開発と提供
  • アクション2: 欧州以外の国の学生・研究者のための奨学金プログラムの開発と提供
  • アクション3: 欧州から欧州以外の国への流動化を促進させる奨学金プログラムを含む、欧州以外の高等教育機関とのパートナーシップの構築
  • アクション4: 欧州の高等教育を世界的に推進するプロジェクトへの支援

2009年から始まった第2期は、以下3つのアクションを支援している。

  • アクション1: 欧州共同修士プログラム及び共同博士プログラムの開発と提供(奨学金含む)
  • アクション2: 欧州と欧州以外の高等教育機関のパートナーシップ、学生・研究者のための奨学金プログラムの開発と提供
  • アクション3: 欧州高等教育の推進(質保証関係のプロジェクトを含む)

リンク

 https://erasmus-plus.ec.europa.eu/  (エラスムス・ムンドゥス計画に関する欧州委員会のウェブページは現在稼働していない。左記リンクは、後継プログラムにあたるエラスムス・プラスのウェブページ)

エラスムス・プラス

正式名称

Erasmus+

策定主体

欧州委員会

策定(実施)年

2014-2020年

概略

2014年~2020年にかけて、最大500万人が他国での学習及び職業訓練/職業教育を受けられるようにするための助成金プログラム。現在欧州委員会が実施している、生涯学習や青少年部門での様々な助成金プログラムを統合し、より統一性と透明性を持たせることが狙いである。流動性(モビリティ)、教育とビジネスの協働、政策改革への支援の3つを主要アクションの柱とする。

Erasmus+から新たに実施される政策としては、以下のものがある。

  1. 修士学生が海外で技術を取得するためのローン保証
  2. “知識同盟”と“セクター別技術同盟”:
    前者は高等教育機関と企業の連携による起業家精神養成、後者は教育/訓練機関と企業の連携による雇用可能性向上を目的としている。
     

リンク

https://erasmus-plus.ec.europa.eu/ 

エラスムス・プラス 2021-2027

正式名称

Erasmus+ 2021-2027

策定主体

欧州委員会

策定(実施)年

2021-2027年

概略

教育、職業訓練、青年の育成、スポーツに関する国境を越えた移動と協働を支援するEUの助成金プログラムであるエラスムス・プラスの後続プログラム。2021年3月25日の欧州委員会の発表によると、新プログラムの予算総額は262億ユーロで、2014~2020年のエラスムス・プラスプログラム予算である147億ユーロを大幅に上回る。

増額された予算を通じて、「よりインクルーシブ(包摂的)に」、「よりデジタルに」、「よりグリーンに」という3つのコンセプトを実現することが狙いである。また、あらゆる年齢層、バックグラウンドを持つ1,000万人のヨーロッパ人の学びに関する人の移動と国境を越えた協力を支援する

3つのコンセプトのうち、「よりデジタルに」については、新型コロナウイルスの感染拡大により教育・訓練システムのデジタル化への移行がますます加速する中、教育におけるデジタル技術の発展を支援し、奨学金制度による質の高いデジタル技術習得のための教育訓練と人々の交流の機会を提供するほか、学生の留学先での学業等における諸手続きの一層のデジタル化と簡素化等を促進することが目指されている。

 

※ エラスムス・プラス2021-2027は欧州の学生の学びの経験の深化を特に目標として掲げているが、欧州以外の国・地域も参加することができる。詳細は以下を参照。

https://erasmus-plus.ec.europa.eu/opportunities/accessing-erasmus-opportunities-from-outside-the-eu 

なお、エラスムス・プラスに採択された全プロジェクトの情報は次のURLから検索できる。https://erasmus-plus.ec.europa.eu/projects  

 

■エラスムス・プラス新プログラムの概要及び予算規模については、当機構の高等教育質保証の海外動向発信サイト掲載の以下の記事からもご覧いただけます。

https://qaupdates.niad.ac.jp/2021/06/18/eu-erasmus2021-2027/

リンク

 https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/IP_21_1326 

 


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電話 : 042-307-1500(代)

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